ドームふじだより No. 65 |
11月24日未明に皆既日食が見られました。昨年の12月にオーストラリアを出港したしらせ船上で部分日食は見られましたが、皆既日食を見るのは初めての隊員がほとんどでした。写真1から4のように向かって左側から欠けて行きました。周りの明るさは始めのうちはほとんど変わりませんでしたが、写真5くらいになった頃から急に暗くなり始めました。ここまでは太陽の光が直接射しているので、フィルター(ここでは何も写っていない黒いレントゲンフィルムを使いました)を通して見たり、写真を撮ったりしています。さらに太陽は月の影に隠れ、光が急激に弱くなった瞬間、写真6のように突然直接射す光が消えて、いわゆる黒い太陽とコロナが見えました。この瞬間は本当に息を飲む感動でした。いつもの空に、見たこともない全く別の天体があるように感じました。辺りは急に暗くなりましたが、残念ながら期待していたオーロラが見えるほどの暗さにはなりませんでした。この時の太陽はフィルターなしで見ることができ、写真もそのまま撮影したものです。この状態が1分強続き、写真7のように再び光が直接射しはじめました。この瞬間をダイヤモンドリングといいます。そして、すぐに肉眼では見られない明るさになり、写真8のように再び元に戻っていきました。写真9は栗崎隊員の撮影したダイヤモンドリングです。フィルターの影響で、赤っぽく写っています。写真10は藤田隊員の撮影した皆既日食の瞬間です。黒い太陽といわれる感じが良く出ています。写真11はこの天体ショーをくつろいでコタツで見ている隊員です。とにかく、映像や言葉では言い尽くせない感動でした。 |
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写真8 再び太陽が戻ってくる
写真9 ダイヤモンドリング(栗崎隊員撮影)
写真10 こたつで日食を楽しむ
写真11 皆既日食と基地(藤田隊員撮影)
ドームふじだより No. 66 |
11月24日、栗崎、中野隊員と私の3名で45次飛行隊5名の出迎え旅行に出発しました。GPSという、人工衛星から送られてくる電波で自分たちの位置を知り、全く誰も通ったことのない雪原を約430km走り、航空拠点を作って飛行機の来るのを待つ旅行です。写真1は雪原を走る雪上車です。帰路にも使いますし、来年、再来年も同じルートを走って出迎え旅行をするので、5kmおきに標識用の赤旗を立て、10kmおきにドラム缶を置いて標識にします。標識用の赤旗は雪の積もり具合を測定する雪尺の役目も果たすので、1本ずつ長さや雪面の状況を記録しておきます(写真2)。写真3は気象観測をしているところです。毎日朝、昼、晩に欠かさず観測を続けました。雪面は場所によって様々な表情を見せ、写真4のような、鏡のように真っ平らで太陽の光が反射するような光沢雪面や、写真5のような、積もった雪が風で削られてサスツルギと呼ばれるでこぼこの場所があったりします。サスツルギは波のようにも、水の上に顔を出すイルカのようにも見えます。というわけで、写真6はイルカに乗った少年をイメージしてみました。写真7は雪上車への給油風景です。燃料ドラムを積んだそりの風上側と風下側に雪上車を1台ずつ停めて、毎日昼と夕方に給油します。こうして5日間かけて航空拠点の候補地に到着しました。(平らな場所を選んだのでドームふじからの距離は約420kmになりました) |
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ドームふじだより No. 67 |
航空拠点を決めたわれわれはさっそく滑走路整備を行いました。滑走路は写真1のように、主風向に沿って幅20m、長さ1kmの部分を雪上車で何往復もして平らにならし、以前に紹介した標識用の黒旗や吹き流しを立てて完成です。翌日から天候が悪化しそうだったので、フライトは予定より1日早くなり、大急ぎで整備をし、11月30日に写真2のように、ノボラザレフスカヤ基地から飛行機が到着しました。45次飛行隊の5名は、我が国の南極観測史上初めて船を使わずに南極に到着したことになります。ほぼ1年ぶりにドームふじ越冬隊8名以外の人に会ったので、とても感動しました。また、新鮮なキャベツ、リンゴ、生卵などをプレゼントしてもらい、ドームに戻ってからみなで舌鼓を打ちました。写真3は航空拠点に建てた看板の前での記念写真です。向かって右後列より鈴木利孝、宮原盛厚、本山秀明、前列右より吉本隆安(以上4名45次夏隊)、田中洋一(45次越冬隊)、向かって左後列より大日方一夫、栗崎高士、前列左中野啓(以上3名44次ドームふじ越冬隊)の各隊員です。飛行機は写真4のように燃料を給油し、無事に離陸、ノボ基地に戻って行きました。45次飛行隊は、いきなり3000mの高地に来たので高所障害が心配されましたが、重篤な症状は現れず、12月5日にドームふじ基地に無事に到着しました。写真12は基地に残っていた5名の熱い歓迎を受けた後の記念写真です。こうしてドームふじ基地の隊員は今までの8名から13名に増えて、賑やかな生活が始まりました。 |
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